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「科学としての感情社会学」再考
第 31回法政大学懸賞論文 優秀賞
「科学としての感情社会学」再考
- 「身体論」からの示唆を得て-
キャリアデザイン学部キャリアデザイン学科4年
澤 田 唯 人
《論文要旨》
これまで人間にとって最も自然に近い現象とされてきた 「感情」
について,そこには社会的な管理や規則が働いているとし,社会
学的対象に据えたのが「感情社会学」である。しかし,感情社会
学は生理学や心理学に基づく普遍主義的な感情理論とは一定の対
峙をしたものの,文化や社会構造,言語的構成との関連でのみ相
対化したため,個々人の「生きられた感情経験」を捉えることが
できなかった。つまり,「生きられた感情経験」の全体性が切り詰
められ,唯一性が蔑ろにされたといえる。それゆえに,感情社会
学の営みが,感情管理を促す道具や言説となる危険性が指摘され,
また「感情」を科学的に分析することそのものの暴力性が,感情
社会学者たち自身によっても度々批判されてきた。しかし,いま
だ「生きられた感情経験」の社会学的説明は導きだされてはいない。
本論文では,以上のような困難の理由が感情社会学の「科学性」にあることに注目し,その問題点
を論じている。そのうえで「生きられた感情経験」を社会学的に説明するための方向性を示そうと試
みた。まず感情社会学の学説史的展開を精査するなかで摘出された問題点から,「科学としての感情社
会学」が「身体」を物体としてのみ捉えているか,またはそれを排除していることが明らかとなった。
さらに,この点を「身体論」から検討するなかで,科学としての感情社会学に共通する問題として,
「感情語」に指し示される感情のみを対象としてきたことが見出された。そして感情の言語的表現に
は身体経験になぞらえられたものが多くあることに着目し,そのような表現が生成される過程に立ち
会うことで,感情社会学が 「生きられた感情経験」を説明できるのではないかということを示唆した。
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「科学としての感情社会学」再考
目 次
はじめに
1.成立期における学説と限界
(1) 感情社会学前史
(2) 実証主義派と相互行為論派
2.社会構築主義からの展開と限界
(1) J ・クルターの「認知主義」批判
(2) 構築主義的アプローチと困難
(3)「生きられた感情経験」という問題
3.身体論からの再構成
(1) 感情社会学と〈身体〉
(2)「生きられた身体」の回復
(3) 両義性・可延性・可逆性・共感覚性
(4)「隠喩性」と感情社会学
4.生きられた感情の社会学へ
(1)「なぞらえ」による経験と理解
(2) 身体感覚とメタファー
(3)
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