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特集2
統計からみる司法制度改革
第 章
1
統計からみる司法制度改革−特集の趣旨−
1 はじめに
2001年6月に司法制度改革審議会意見書(以下「審議会意見書」という。)が提出されてから、10年
あまりを経過した。この間、「司法制度改革推進法」をはじめとする25の司法制度改革関連法が成立
し、それに基づいて新設された各制度は既に実施に移されている。しかし、司法制度改革は、各制度が
実施の緒についたという段階であり、改革自体がその目的を終えて終了したという段階ではない。審議
会意見書で改革の理念が提示されているものの、現実の制度改革は未着手または未整備な分野もあれ
ば、裁判員制度のように施行後に見直しの検討が予定されているものもある。また、改革の理念に基づ
く制度がスタートしたものの問題が指摘されている分野もある。
審議会意見書提出から10年あまりを経過した節目の時期にあたり、本白書において、客観的な統計資
料等から司法制度改革を振り返ってみることとしたい。
2 司法制度改革とは
1.改革の機運の高まり
日弁連は、1980年代までの機能低下した司法からの脱却を図るため、1990年5月に「司法改革宣言」
を採択し、国民とともに司法改革に取り組んでいくという姿勢を明確にした。1990年代には、弁護士・
弁護士会自らが、市民と連携しながら現場実践を通じて、当番弁護士運動や法律相談センター運動な
ど、将来の制度改革を展望した改革運動を行った。また、社会情勢の変化に伴い、経済界など各界から
も、社会のニーズに応えることのできる司法制度や法曹が求められるようになった。
2.司法制度改革審議会
このような弁護士・弁護士会の活動や制度利用者をはじめ各界からの改革の機運の高まりを受けて、
政府は1999年7月に司法制度改革審議会(以下「審議会」という。)を設置し、国民が身近に利用する
ことができ、国民の権利擁護に資するよう司法制度の改革に向けて検討を開始することとした。
審議会は、司法制度改革の基本理念を検討するにあたり、司法・国民・法曹のそれぞれに期待される
役割について明らかにした。司法は立法・行政と並ぶもう一つの「『公共性の空間』を支える柱」と位
置づけられ、司法の役割・機能の拡大・強化を図ることが必要であるとされた。国民は、裁かれる立場
としてではなく、権利主体・統治主体としての国民として位置づけられ、裁判を受ける権利の保障や国
民の司法参加の基盤となる基本理念とされた。また、法曹は、権利主体・統治主体たる国民を法的に支
援するプロフェッションとして位置づけられ、質量ともに拡充し、社会の様々な分野で幅広く活躍する
ことが期待されることとなった。
審議会は、約2年の議論を経て、①国民の期待に応える司法制度の構築、②司法制度を支える法曹の
在り方、③国民的基盤の確立を3つの柱とし、司法制度の改革と基盤の整備に向けた広範な提言を盛り
込んだ審議会意見書を取りまとめた。
42 弁護士白書 2012年版
特集2 統計からみる司法制度改革
特集2-1 統計からみる司法制度改革 −特集の趣旨−
3.改革の社会的合意と関係機関の責務
審議会は、法曹のみならず広く各界の委員により構成され、議事や議事録が公開されたほか、各地で
の公聴会の実施や意見募集など、国民的な広がりの中で議論が進められた。このような審議会での議論
を通じて、司法の役割と機能の拡大・強化の枠組みに関する初めての社会的合意が生まれたとみること
ができる。また、審議会の議論は、国に対して、財政措置も含め司法制度改革を推進すべき責務を果た
すべきことを求め、弁護士・弁護士会には、司法制度改革の担い手として、より広い市民的基盤をもっ
た弁護士・弁護士会を求めることともなった。
3 司法制度改革によって創設された制度
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