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[第 部]
データからみる『社会学評論』
投稿動向と査読動向を中心に
齋 藤 圭 介 *
本稿は学会機関誌編集の要である査読制度に焦点を当て,投稿動向・査読動
向の基礎的なデータを提示することで,『社会学評論』の基本的な特徴を会員
間で共有することを目的とする.2 節で査読制度導入の歴史的経緯について言
及したのち,3 節と 4 節では 2001 年度からの 10 年度分のデータを用いて,投
稿動向と査読動向について検討を行う.3 節では初回審査結果を中心に評価の
分布について網羅的に提示をする.とくに初回審査でC評価が多いことに着目
し,初回C評価の論文のその後の審査プロセスの全体像の提示を行う.つづく
4 節では,投稿者・掲載者の職位に着目をし,その分布を示す.5 節と 6 節で
は情報公開一般の議論と本稿の課題を重ね合わせ考察を行う.
以上の作業から, 『社会学評論』の査読制度は,きわめて厳格なルールに基
づいて進められており,また公平性が担保された優れた制度であるということ
が明らかとなった. 『社会学評論』における査読制度のこうした情報公開は,
情報の一般的な提供にとどまらず,いわば〈日本社会学会の社会学〉として研
究対象となりうることも示唆された.
キーワード:学会誌,投稿動向,査読制度
1 情報公開の経緯と本稿の目的
日本社会学会の機関誌である『社会学評論』(以下,『評論』)は, 年任期の委
員により構成される編集委員会によって編集業務のいっさいが執り仕切られている.
学会大会時を合わせて年 回開催される編集委員会の席上では,『評論』をより魅
力的な学会誌にすべく活発な意見交換が編集委員間で行われている.編集委員会で
の重要な決定事項は,編集後記などの『評論』紙上,学会ニュース,そして学会大
会時の総会などで積極的に会員に報告をしてきた.また情報公開の観点から,会員
にとくに有用であろうと思われる投稿数や掲載数などのデータについても,各種媒
体で適宜報告してきた.
* 『社会学評論』編集事務局/東京大学大学院人文社会系研究科博士課程 jpn_sr@yahoo.co.jp/LL66108@
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そうした編集委員会の実績や方針について,会員からご意見をいただくことは多
い.編集委員会の日々の努力が労われることがある一方で,残念ながら手厳しいも
のも多くあるのが現状である.たとえば日本社会学会の若手研究者問題検討特別委
員会が 2009 年に作成した報告書『若手研究者の研究・生活の現状と研究活性化に
向けた課題』をみたい.この報告書は,日本社会学会に 09 年時点で正会員・院生
会員として所属する満 40 歳以下の会員すべてを対象とし,日本社会学会が抱える
若手問題を包括的に把握するために本学会の一委員会である若手研究者問題検討特
別委員会(2007 年発足,委員長〔当時〕小内透)が作成したものである.この報
告書のなかにある『評論』への 自由回答の個所には,若手会員の生の声が掲載され
ている(日本社会学会若手研究者問題検討特別委員会 2009 : 99-100).この報告書
に限 らず日々の業務を通 して編集委員会宛 にいただくご意見は,編集委員会が取 り
組むべき課題を明確 にすることに役立 ち,今後の編集方針を議論するさいに貴重な
指針となっている.
その一方で, 『評論』の実態が周知 されていないが えに 「誤った」情報に基づ
くご意見も 編集委員会による情報提供不足がおもな原因であるケースがもち
ろん多いだろうが ある.そこで今期の編集委員会(伊藤公雄委員長)では,
具体的な課題の解決に向け つひとつ粘 り強 く取 り組む作業を継続するとともに,
情報公開一般の方法 ・対象・頻度などについても慎重に検討を重ねてきた.検討の
結果,今期の編集委員会による報告書というかたちで,会員
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