米国ミネソタ州オッセオ学校区におけるトランジションプログラム.pdf
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Ⅰ.はじめに
トランジションプログラム(transitoin program)は直
訳すると「移行プログラム」となり,日本では「移行支援
プログラム」として使われることが多い。これは学校教育
から実社会へと生活の場を移行していくために必要なト
レーニングを行う課程である。
ミネソタ州ではこのトランジションプログラムを,社会
人として生きるための全人的な教育として,高校卒業後か
ら成人する2歳までの3年間の教育とトレーニング,就
労支援,一人で生きていくための生活訓練(家庭生活,地
域住民としての生活,余暇活動等)として取り組んでい
る。
日本では,高等学校以降,職業に就くためにより専門的
な技能を身につけるための「職業教育」という考え方が中
心であったが,近年自立した社会人?職業人としてのキャ
リア形成の重要性に視点を向けた「キャリア教育」という
概念が広がってきている。中央審議会のキャリア教育?職
業教育部会が平成2年7月30日に出した「今後のキャリ
ア教育?職業教育の在り方について(審議経過報告)」でも,
「キャリア」という言葉は,「個々人が生涯にわたって遂行
する様々な立場や役割の連鎖及びその過程における自己と
働くこととの関係付けや価値付けの累積」であるとし,職
業生活や市民生活,家庭生活,文化生活等,すべての生活
局面における立場,役割を含むものであるとしている。そ
の上で「それぞれにふさわしいキャリアを形成していく」
ことは,言い換えれば,「社会的?職業的に自立していく」
ことと同じである,と述べている4)。
また,この視点は今年度改訂された特別支援学校の学習
指導要領にも反映されており,特に高等部学習指導要領で
は,職業教育に関する配慮事項としてキャリア教育の一層
の推進がうたわれている5)。
このような観点から,ミネソタ州でのトランジションプ
ログラム(transitoin program)は日本におけるキャリ
ア教育に通ずるものではないかと考え,ここに紹介する。
筆者は,機会を得て平成2年3月9日から3日までの
5日間,ミネアポリス市近郊のオッセオ学校区のOsseo
Secondary Transition Center(以下OSTCと記す)にて研
修を受けた。期間中はOSTCで学生とともにクラスで活動
(授業)し,放課後を中心にOSTCの理念等の講義を受け
た。また,連携する職業訓練機関の訪問や地域の高等学校
の職業訓練クラス(日本での特別支援学級)の視察等も経
験した。個人の研修であったため,整理された体系的な報
第2部 国際会議?外国調査等の報告
米国ミネソタ州オッセオ学校区におけるトランジションプログラム
-社会的な自立を目指した Osseo Secondary Transition Center での取り組み-
The Transition Program of Osseo School District in Minnesota State, U.S.A.:
The Approach of the Osseo Secondary Transition Center Aiming at Social Independence
梅 田 真 理
UMEDA Mari
(発達障害教育情報センター)
(Information Center of Education for Persons with Developmental Disabilities)
要旨:本稿では,ミネソタ州におけるトランジションプログラムの中でも,特にオッセオ学校区にある
Osseo Secondary Transition Centerでの取り組みについて紹介する。Osseo Secondary Transition Center
(以下OSTCと記す)では,障害の有無にかかわらず,学生を「一人の人間」として「よき社会人」に育て
るという使命をもって指導を行っている。また,働くことを通して,実社会で生活するために必要な心構
えや技術を身に付けることも目指している。そのために,実に多彩なしかも実際的なカリキュラムが組ま
れ,関連する教育機関や企業との連携がなされている。これらは今後日本でのキャリア教育充実に向け参
考になるものであると考える。
キーワード: トランジションプログラム,自己理解,社会的自立
Key Words: transition program, self-awareness, social independence
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告にはならないが,それぞれの研修で得た90種以上のパ
ンフレットや教材のプリント,ツールキッド等の資料や,
実際に学生たちが学ぶ様子を見,クラスで共に活動
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