武蔵野美術大学博士学位論文内容の要旨および審査結果.PDF
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武蔵野美術大学 博士学位論文 内容の要旨および審査結果の要旨
氏 名 井口 雄介 (イグチ ユウスケ)
学 位 の 種 類 博士(造形)
学 位 記 番 号 博第 13 号
学 位 授 与 日 平成 25 年 3 月 19 日
学位授与の要件 学位規則第3条第1項第3号該当
論 文 題 目 仮設的作品における<場>の問題
~屋外型インスタレーションにおける作品性~
審 査 委 員 主査 武蔵野美術大学 教授 伊藤 誠
副査 武蔵野美術大学 教授 髙島 直之
副査 武蔵野美術大学 教授 田中 正之
副査 東京藝術大学 准教授 八谷 和彦
内 容 の 要 旨
1970 年代以降インスタレーション・アート(installation art)という言葉が頻繁に用い
られるようになり、「絵画や彫刻」というような、あたかも一つの手法、ジャンルとして
扱われているが、実際は明確な定義はなされていない。むしろ「彫刻」、「絵画」と一概に
言えないもの全般を総称してインスタレーション・アートと呼ばれることもしばしばであ
る。本論文ではインスタレーション・アートが「仮設的」であることに着目し、作品が仮
設ということがどのような効果をもち合わせているかを研究したものである。仮設ゆえに
作品は保存されることがないため、多くの作品は<場>と関わるものとなっている。そこ
でまずは<場>がどのようなものか、またどのように成立しているかを検証した。
<場>とアートの関わりとしてはサイト・スペシフィックという言葉がすでに存在し、多
く使われているが、それでもインスタレーション・アートの定義には至っておらず、今回、
<場>を論じていくうえで、建築学や現象学といったさまざまな視点から<場>の問題を
検証した。
全体は三部からなり、第一部では人が作り出す「領域」という不確定で、視覚的に見え
ない<場>の形成に関して考察した。この章では建築的な視点から、環境によって変化す
る、個人が作り出す領域をあらわす「閾」、周りのものから人が作り出す境界を「仮想境界
面」として、それぞれがどのように生成、変化するかを論及した。そしてこれらの言葉を
より芸術表現とつなげるため、現象学を用いて立証することを試みた。第二部では実際に
存在している<場>に焦点をあて、「空間」と「場所」の違いは、人の「経験」によって変
化するものと論じた。人は特質的な「経験」をすることで「空間」から「場所」という認
識にかわるのである。経験と<場>をあつかった作品展開で外せないミニマリズム=リテ
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武蔵野美術大学 博士学位論文 内容の要旨および審査結果の要旨
ラリズムに言及するため、マイケル・フリードの論文「芸術と客体性」(1968) の発表以降、
作品と<場>がどのように変化していったかを検証した。第三部では美術館という作品の
ためにつくられた特殊な場所について考察した。美術館では展示が入れ替わるため、同じ
<場>でも違った作品の経験がもたらされる。そのため、美術館自体は作品を見るための
目的が存在する「場所」ではあっても、個人個人にとっての「場所」にはなりえにくい。
美術館での<場>を扱った作品はどのようなものがあるか、またインスタレーション・アー
トを目的とした美術館は他とどのように違うかを具体的な作家を挙げ考察してきた。
全体にわたり、インスタレーション作品と<場>の関わりについて、鑑賞者の「経験」
をもとに論及した。インスタレーション・アートとは仮設であるがゆえに鑑賞者の存在は
必須であり、作品が「もの」として鑑賞者に持続した「経験」を与え続けられるものではない。
インスタレーション・アートとは鑑賞者の中に「場所」というものを作ることが重要であ
るということを結論とした。
審 査 結 果 の 要 旨
インスタレーション・アートは、世界的にも戦後−現代の美術史にとってきわめて重要
なものである
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