文档详情

★昭和文学の原点をさぐる.doc

发布:2018-06-24约1.32千字共10页下载文档
文本预览下载声明
葉山嘉樹は「海に生くる人々」「淫売婦」「セメント樽の中の手紙」など、大正末から昭和にかけて数多の傑作を残したプロレタリア文学の代表的作家だが、一般にはほとんど忘れ去られている。その葉山のすぐれた研究書が出たと聞き、著者はかなり年配の人でプロレタリア文学とも何かかかわりあいがあるのでは、と想像したが、浦西和彦さんは三十一歳、まだ少年の面影が残る青年研究者であった。 「ええ、実はブロレタリア文学なんて文学ではないと思いこみ、学生時代はろくに読んだこともなかったんですよ」ちょっと肩をすくめるようにした。それが、そうでなくなったのは昭和三十九年、岐阜県坂下女子高校に勤めたことから。天竜川の橋ひとつ隔てた長野県山口村は葉山が晩年をすごした所で、近くにはその文学碑もある。「で、何の気なしに小説を読みはじめたら、これが実にすばらしく迫力も十分で感動してしまいました」以来、古書店や図書館で葉山の作品をさがしては読みあさり、ついにその正確な資料作りを思いたった。一昨年春、母校関西大学の講師になってからも調査を続け、このほどようやく『葉山嘉樹』(桜風社?二、〇〇〇円)をまとめあげた。年譜、著作目録、参考文献目録、書簡の四部から成っているが、柱となった年譜はとくに精密を極め、新形式によるすぐれた葉山嘉樹伝だという声が高い。「葉山ほど今にいたるまで私 に解らぬ人間はない。たんに矛盾とか複雑とかいふ言葉で言ひあらはせないものが、葉山に あった」(青野季吉?昭和二十一年)といわれた葉山の生涯が、かれ自身の日記や関係者の証 言、葉山作品をめぐる数多くの時評?書評などで見事に再現している。 宇野浩二が大正十五年「新潮」の文芸時評で葉山にふれ、葉山は豊富な体験の持ち主と聞 いたが「淫売婦」も「セメント樽の中の手紙」も空想だと思うと述べ、「その位のことが空想で書 けなければ小説志望は止した方がいゝ」と記していることなど、興昧深い。 「あんまり認めたくはないんだけど、無視するわけにはいかないというのが宇野さんたちの気 持ちでしょうか。面白いですねえ」 また、大正十二年「治安警察法違反」で名古屋刑務所に入れられた際は、差し入れのマルク スを読み、代表作「海に生くる人々」の執筆にとりかかったとある。 「葉山のスケールの大きさもさることながら、時代もまだまだよかったんですね。刑務所で社 会主義の教育をしているようなもんでしょう」 ところで、「調査に当たっては具体的な事実を必ず自分の目で確かめる」のが主義だという浦 西さんは、ここ数年、夏の休みには上京して国会図書館や近代文学館にこもっている。『葉山 嘉樹』の完成した今夏も上京、猛暑の中で調べに没頭した。 「今度は徳永直です。プロレタリア文学は昭和文学の原点の一つじゃなかったかと最近考え るんですが、重い意味を持つわりには十分に研究が行われていない。葉山と同じ文戦派の里 村欣三や前田河広一郎なども調べてみたいし、伊藤永之介はぼつぼつ作品を集めているんで すが、こう古本が高くなってはねえ」 気負いもてらいもない口調で語りつぐ。プロレタリア文学は、思いがけない理解者に恵まれた というべきだろう。
显示全部
相似文档