人間学部心理学科の取り組み.pdf
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心理学科の特色ある教育として,人間学特講における授業を行ってきた。
ここでは,まずこの授業の趣旨について述べ,それからこれまでのこの授業での取り組みにつ
いて紹介をする。次に,2003年度の活動について報告し,最後に今後のあり方について考える
ことにする。
1 「人間学特講(一)」の趣旨
大学の授業においては,単一の領域に関しての講義が中心となっている。しかし,人に関する
あらゆる領域と関係しているという心理学の特徴を考えると,心理学の領域のみを教授すること
では十分ではない。むしろ,心理学以外のさまざまな領域と連携することにより問題としている
ことがらの様々な意味を知ることによって,それぞれの意味から派生する問題を予想して心理学
的にその問題を扱うことが必要だと考えられる。
この講義の趣旨は,「人間学特講(一)」の授業において心理学科の特色ある教育を実現しよう
というものである。そして,この科目は心理学科の総合科目でもある。この授業は,特定の学問
領域の紹介や解説をするのではなく,課題を中心に据えて,さまざまな学問分野からその課題を
眺めることで,その課題についてのより総合的な理解を目指すものである。すなわち,この授業
では単に○○学問の紹介をするのではなく,課題を中心に据え,その課題を解くには様々な道
(学問領域)があること,それぞれの分野で特有のアプローチや解決が為されようとしているこ
と,そして何よりも単一学問領域では見えてこない意味を理解することをめざしたものである。
実際,私たちにとって意味のあることは,問題の解決であり,その際に学問の領域にこだわる意
味はないと考えられる。そこで,これからの学問を担う学生に対して,学問領域の枠にとらわれ
ない考えで問題を眺め,解決することの意義を理解してもらおうとするのがこの授業の目的でも
ある。この目的を達成するために,授業の形態も1人の教員は1回の講義をするというように,
多数の教員が毎回代わり同じテーマについて異なるアプローチを学生に提供するというオムニバ
ス形式をとっている。
受講生の便宜を図るために,資料として心理学論集を発刊してその中にこの授業の資料を特集
として掲載することとし,受講生に配布することとすると共に,心理学論集は追手門学院大学の
全ての教員とすべての心理学科学生にも配布することにしている。
人間学部心理学科の取り組み
落 合 正 行(人間学部心理学科)
[Ⅰ]各学部?学科の「特色ある教育」報告
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2 これまでの取り組み
これまでのテーマは以下の通りである。
1996年度
テーマ:老いることの意味
講演会 関 殉一(神戸国際大学):「生涯発達と自己実現」
1997年度
テーマ:「”個”の意味」について
講演会 濱口恵俊(滋賀県立大学人間文化学部):「複雑系としての人間?社会システム」
1998年度
前期テーマ:「言語」について
後期テーマ:「遊び」について
講演会
中田武仁(国連ボランティア名誉大使)「今,何故,ボランティアか―私たちはみんな必要
とされている人たちなのです―」
1999年度
テーマ:心理学と社会
講演会 志水英二(大阪市立大学工学部電気工学科):「21世紀の技術は「心」に向かう!」
2000年度
テーマ:「自然と文化」
講演会 田中 滋(龍谷大学社会学部)「自然環境保護運動と消費社会」
2001年度
テーマ:大学生
講演会 白井利明(大阪教育大学)「時間的展望からみた大学生」
2002年度
テーマ:「21世紀の人間性の探求:「世代間比較からみえる人間性」
趣旨は以下の通りである。
この授業は,心理学科の特色ある教育の一環として位置づけられている。また,心理学科の総
合科目でもある。この授業は,特定の学問領域の紹介や解説をするのではなく,課題(今年度の
テーマは「世代間比較からみえる人間性」)を中心に据えて,さまざまな学問分野からその課題
を眺めることで,その課題についてのより総合的な理解を目指すものである。具体的には,「世
代間比較からみえる人間性」というテーマに対して,特定の心理学の領域からだけではなく,青
年心理学,認知心理学,カウンセリング心理学,臨床心理学など種々の心理学の分野から,さら
に経済学,経営学,文学,教育学など異なる学問分野からみると「世代間比較からみえる人間性」
人間学部心理学科の取り組み
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がどのようにとられられているか,何が問題となっているか,それぞれの学問分野では「世代間
比較からみえる人間性」のどのようなことについて如何に説明しようとしているのかについて明
らかにすることで,受講生が「世代間比較からみえる人間性」というテーマに関して多様なとら
え方を理解し,さらにその多様な意味
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