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複製技術による芸術概念の変質 -ベンヤミンの現代芸術の分析につ
Title
いて-
Author(s) 園田, 尚弘
Citation
Issue Date 1977
URL /10069/9669
Right
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
複製技術による芸術概念の変質
-ベンヤミンの現代芸術の分析について-
園田尚弘
NAOHIRO SONODA
序
ヴァルター・ベンヤミンはその「複製技術時代の芸術作品」 (1936年)と題した論文の冒頭に
モットーとして,ボール・ヴァレリーの「現在性の獲得」からとった一節を引用している.ヴァ
レリーはそこで近代科学や現代的実践活動の影響によって,芸術という概念そのものが変化する
だろうという予見考述べている・芸術作品には必らず物質的側面が存在する以上,科学や技術の
発達に附随して芸術作品の性格も変化するというのである.ベンヤミンはこのヴァレリーの指摘
を承けて,殊に複製技術の進展によって芸術のありようが過去の芸術作品のそれとはどのように
変化したかを,その論文において明解に分析している.そして論文の後半においては,現代芸術
の典型として映画をとりあげ,その特性について論じている.そこでわれわれは,ベンヤミンが
現代芸術をどのように把握したかを探求し,あわせて現代の芸術創造,あるいはその受容にとっ
て不可欠の役割を果しつつあるテレビジョンの問題について少しく考察してみたい.
I
ベンヤミンの主要著作である「ドイツ悲劇の根源」が17位紀を,そして「シャルル・ボードレ
ール」が19世紀を対象としていることや,ベンヤミンが好んで文学的エッセイの対象とした作家
がプル-スト,レスコフ等であること,あるいは彼が翻訳したフランスの小説作品,拝情詩Bが,
いわゆる進歩的芸術家によって書かれたものではないといった事態から,人はマルクス主義者と
してのベンヤミンの目が,一見郷愁にみちたまなざしで過去を向いていることをいぶかしむかも
m翌 園田尚弘
しれない.しかし,ベンヤミンが過去を論述の対象としながら,その背後には自らの生きる現在
時への激烈な問題意識をひそませていることは見逃してはならない事実である.そして過去と現
在を縦横にゆききする彼の目は,たんにたとえば文芸といった個別領域を越えて社会事象の諸相
を把握し,歴史的変動の総体をとらえようとする.資本主義下において急速に発達した技術のも
たらす,あるいは技術をおし進める状況への絶えざる関心も,彼のそのような全体的統合への努
力の一環として,いくつかのエッセイ,あるいは書評のかたちで結実している.
ベンヤミンは,現代社会における技術の重要性を早くから強調し,さまざまのイデオロギーに
含まれる技術観についても1930年代以前に,すでにその評価をなし終えていた.たとえば書評
「ドイツファシズムの理論」はクラ-ゲス,ユンガ-一派の思想にみられる7ァシズム思想と技
術観との関係を暴露した仕事のひとつである.ファシズムの強圧に対する思想斗争をめざしたそ
れらのエッセイ,評論のなかでも,とりわけ「複製技術時代の芸術作品」において彼は集中的に
技術と芸術の不可分の関係について論じている.
ファシズムがうちだす技術観,芸術観を反撃す、る意味をもったこの論文において,ベンヤミン
は,在来の芸術論にみられる永遠の価値とか神秘性といった概念をもちこまず,歴史的に複製技
術の発達と,それが直面しなければならなかった既存の芸術観との抗争過程を後づけながら,覗
代の芸術概念の変質を提示し,その事実に基礎づけられた芸術政策をも明確に表現しようとした.
ベンヤミンによれば,芸術作品は原理的には古代以来複製が可能であった.たとえば古代ギリ
シア人は鋳造と刻印という二つの複製技術を有していた.その後の歴史のなかで木版,銅版,エ
ッチング,そして石版が複製技術に加わる.しかし,石版印刷が
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