吾辈は猫である-我是猫-日文文字版.pdf
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吾輩は猫である
夏目漱石
吾輩は猫である1
夏目漱石1
一1
二42
三183
四301
五387
六473
七560
八651
九757
十858
十一991
一
わがはい
吾 輩 は猫である。名前はまだ無い。
けんとう
どこで生れたかとんと 見 当 がつかぬ。何で
も薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いて
いた事だけは記憶している。吾輩はここで始めて
人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれ
どうあく
は書生という人間中で一番 獰 悪 な種族であ
ったそうだ。この書生というのは時々我々を
つかま に
捕 煮
えて て食うという話である。しかしその
当時は何という考もなかったから別段恐しいと
てのひら
も思わなかった。ただ彼の 掌 に載せられて
スーと持ち上げられた時何だかフワフワした感
じがあったばかりである。掌の上で少し落ちつい
て書生の顔を見たのがいわゆる人間というもの
みはじめ
の 見 始 であろう。この時妙なものだと思った
感じが今でも残っている。第一毛をもって装飾さ
やかん
れべきはずの顔がつるつるしてまるで薬 缶だ。
ご あ かたわ
その後猫にもだいぶ逢ったがこんな片 輪には
でく
一度も出会わした事がない。のみならず顔の真中
があまりに突起している。そうしてその穴の中か
けむり む
ら時々ぷうぷうと 煙 を吹く。どうも咽せぽく
たばこ
て実に弱った。これが人間の飲む煙 草というも
のである事はようやくこの頃知った。
うち
この書生の掌の 裏 でしばらくはよい心持に
坐っておったが、しばらくすると非常な速力で運
転し始めた。書生が動くのか自分だけが動くのか
むやみ
分らないが無 暗に眼が廻る。胸が悪くなる。
とうてい
到 底 助からないと思っていると、どさりと音
がして眼から火が出た。それまでは記憶している
があとは何の事やらいくら考え出そうとしても
分らない。
ふと気が付いて見ると書生はいない。たくさん
ぴき かんじん
おった兄弟が一 疋 も見えぬ。 肝 心 の母親さ
いま
え姿を隠してしまった。その上 今 までの所とは
むやみ
違って無 暗に明るい。眼を明いていられぬくら
ようす
いだ。はてな何でも容 子がおかしいと、のその
は わら
這
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